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機関車と摩擦

買い物帰り、踏み切り待ちをしていました。
何の気なしに通過してしまう踏み切りでも、待たされていると、「どんな電車が来るのだろう?」と気になります。
旅行に出られない環境に置かれているためか、遠くから走ってきた、遠くに向かう列車に想いが走るのでしょうか。
山岳地帯や田園地帯のジオラマの中を鉄道模型を走らせて眺めたい、などと思ったりもします。

踏み切り待ちをしているとき、カメラを持っていれば電車が来る方向にレンズを向けて待っているのですが、今日は持ってきませんでした。
不思議にこういうときに限って、珍しい電車が通るものです。
たとえば、塗装が青いBlue Thunder、側面に流星が描いてあるEF型、団体専用列車を牽引しているヘッドマーク付きの機関車です。
逆に、カメラを向けて待ち構えているときには見慣れた中距離通勤電車 でがっかりさせてくれます。
(実は、列車を撮るのに適したカメラは大きな一眼レフしか持っていないので外出時に携帯することは無くなりました)

カメラを構えていない今日は、JR貨物のEF型電気機関車でした。
直方体に動輪をつけたような有り触れたデザインなので撮り損ねたという気持ちは沸きませんでしたが、機関車を見ていつも思うのは、どうして何十両もの貨車を牽引できるのか?です。
目の前を通過した機関車は20両ぐらい牽引していました。

牽引される貨車の動きに抵抗する鉄輪部分の摩擦がない、貨車が空気抵抗を受けないと仮定すれば、理屈では貨車を何両でも牽引できます。
実際には、機関車とレール間の摩擦の大きさ、貨車の動きを邪魔する鉄輪部分の摩擦や貨車が受ける空気抵抗の大きさで決まります。
出来るだけ多くの貨車を牽くためには、前者を大きくし、後者を小さくする必要があります。
前者、すなわち機関車の方は鉄輪とレール間に生じる摩擦力を大きくするために機関車内部に4トンぐらいの錘を入れています。
機関車を重くすると、鉄輪とレールがより密着します。
すると、鉄輪とレール表面にある小さな凸凹が噛み合って摩擦が大きくなると考えられますが、もっと重要なのは鉄輪とレールの表面が密着すると、各々の表面にある鉄原子がお互いに手を結ぼうとするために摩擦力が非常に大きくなるということです。

鉄の塊を半分に切断すると、切断面に極近い所にあった鉄原子は手を結んでいた隣の鉄原子と離れさせられます。
しかし、結んでいた手を離された手は近くの原子と手を繋ぎたくて仕方がありません。
水のような液体の場合には分子がある程度自由に動けます。
そのため、他の分子と直ぐに手を繋げるので球状になったり、防水加工してある傘に落ちた雨粒の様に盛り上がったりします。
このような現象は表面張力によると言います。
鉄のような金属の場合には自由に動くことが出来ないので極近くに手を繋げるような原子が来るのを待つだけです。

このようにして、機関車の方はレールとの摩擦力を大きくしています。
ですから、レールの表面が光るほど滑らかになっていても機関車(客車にモーターを内蔵した電車なども)は滑ることなく走れるのです。

他方、牽引される貨車の方は氷の上を滑るように摩擦を少なくしなければなりません。
そこで、鉄輪の車軸を支える軸受けにはよく回転するベアリングを用います。
ベアリングというのは、多くの鉄球が回転軸(車軸)を支えるように作られています。
この鉄球がよく回るので回転軸も抵抗を受けることなくよく回ります。
ただし、鉄球だけでは鉄球が接している回転軸や鉄球を収めている筐体部分で原子同士が手を結びたがって摩擦力が大きくなってしまいますから、鉄球の表面には鉄原子と仲が悪い鉱物油を塗って鉄原子同士が近づかないようにしています。
自転車のチェーンやギア部分に油を点すのも同じ理由です。

と理屈は解っていても、何十両もの貨車を曳く機関車には不思議な魅力があります。
鉄っちゃん(鉄道マニア)に機関車好きが多いのも解ります。



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