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生物と水

身近な自然と科学 Vol.35【生物と水】

今回は、生物にとっての水の役割を考えてみました。
暦の上では大暑を過ぎましたが、これからが暑さの本番で、生物にとって水が一番必要な時期です。
水の役割を列挙してみました。

  1. 血液などに見られるように栄養物や老廃物を溶かし、或いは、運搬する為に使われる
  2. 細胞の内外に水分を溜める事により、生物体としての形を維持する。
    水分が無くなった植物は萎れてしまいますし、動物でも水分が無くなると肌に張りが無くなったりします。
  3. 蒸発する時の気化熱により体温を下げる

どれも重要な役割ですが、今回は、活動エネルギーの生産という立場からみたいと思います。
動物はもちろんですが、植物もグルコース(ブドウ糖)などの単糖(注3)から
活動に必要なエネルギーを得ています。
植物は光合成により自分で単糖を作れますが、活動エネルギーは、動物と変わらない呼吸によって得ています。

単糖に酸素を反応させて、水と二酸化炭素が出来る過程で出るエネルギーを生物は利用している訳です。
『単糖を酸化させ、酸素を還元する過程でエネルギーを得ています』
“酸化”と言う言葉は、揚げ物が酸化して食べられなくなった、とか日常でも使いますが、科学的には『電子』を失うことです。
酸素は、他の物質から電子を奪う力が強いので酸素に触れている物質は電子を失って変質するのです。
『酸化は電子を失い、還元は電子を得る』ことで、電子を奪う、奪われるは立場が違うだけですから酸化と還元は同時に起こります。

話をエネルギー生成に戻します。
1モル(注1)のグルコースを酸化させると700キロカロリーのエネルギーが出ます。

このエネルギーは、試験管内で酸化させれば熱として一気に出てしまいます。
恒温動物の場合は熱生成も必要ですが、全てが熱になられたのでは活動エネルギーが無くなってしまいます。
そこで生体では、このエネルギーを利用しやすいATP(アデノシン3リン酸)中に高エネルギーリン酸を結合するという形で貯えます。
(正確には、高エネルギーリン酸が結合しているからATPです)
そして、生体がエネルギーを必要とした時には、ATPを加水分解(注2)して
高エネルギーリン酸を引き離す過程で生じるエネルギーを利用しています。
グルコース1分子あたり最高40個のATPが作られますが、単糖を分解する過程で2個のATPが使われるので、実質的には最高38個のATPが作られて活動エネルギーになります。
ATP1個は、7.5キロカロリーのエネルギーを持って居るのでグルコースが酸化
する際に放出されるエネルギーの約40%がATPとして貯えられることになります。

ATPが作られる過程ですが、先ず、単糖は既にあるATPのエネルギーによって活性化され、“解糖系”と言われる行程に入ります。
ここで様々な脱水素酵素が介在する酸化還元反応で8個のATPとPyruvic acid、乳酸、エタノールなどに分解されます。

続いて、Pyruvic acidは“クエン酸回路”と言われる行程に入ります。
クエン酸回路はループ構造になっていて、この回路を循環する間に30個のATPが作られます。
エネルギー生成に関して言えば、クエン酸回路の主要部分は、“電子伝達経路”です。
この部分も脱水素酵素が介在する酸化還元反応で、ある物質(注5)に電子を与え(物質は還元される)、その物質と酸素との酸化還元電位差(注6)を利用して(結果的に酸素が電子を受け取り、物質は酸化される)
ATP(アデノシン3リン酸)中に高エネルギーリン酸を結合します。
物質を変えながら何度かこの反応を繰り返し、1つの電子伝達経路で最高3個のATPが作られます。
ちなみに酸素を嫌う生物の場合・・・たとえば、メタン細菌は二酸化炭素に電子を与えてメタンガスを放出します。
マメ科植物の根に寄生する根粒菌は、空気中の窒素ガスに電子を与えてアンモニアを生成し植物に与えています。

ここで、問題は、ある物質に電子を与えるのは何かです。
今回のテーマにやっと辿り着きました。
でも、結論は極短くて・・・
放射性同位体(注7)を使った実験によると、エネルギーを生産する酸化還元反応に必要な電子の供給元は“水”だそうです。

もっと端的に言うと、一部の細菌や高等動物・植物は、食物(植物は太陽光)のエネルギーを利用して、水の電子を酸素に渡す際に出るエネルギーで活動しています。

もちろん、物を食べるというのは、エネルギーだけの問題ではありません。
前述の“解糖系”“クエン酸回路”では、単糖からエネルギー以外に生物の身体を作る物質(セルロース、タンパク質など)まで作っています。
エネルギー変換率は40%でも有用物質を作る働きまで含めたら信じられないほどの高効率ではないでしょうか。
ATPを作り出す際に排出される二酸化炭素も地球上に酸素が無かった時代に進化した植物にとっては、今でも極めて重要な物です。

注1:1モル
約 6.02の10の23乗の単位粒子(原子・分子・イオンなど)を含む系の物質量

注2:加水分解水が作用して起る分解反応

注3:単糖
加水分解してもそれ以上簡単な糖にならない糖

注5:ある物質
NAD:ニコチンアミドアデニシンジヌクレオチド
FAD:フラビンアデニシンジヌクレオチド
チトクロム
チトクロムオキシターゼ
など

注6:酸化還元電位差
酸化力が強いとプラス電位、還元力が強いとマイナス電位になっています。
ですから、酸化力の強い物質と還元力が強い物質間では電池のようなエネルギーが生じます。

注7:放射性同位体
この場合は、放射線であるベーター線を放射する水(同位体)植物にこの水を与え、ベーター線の強度を測る事でこの水が何に使われたが突き止められます


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