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自己と非自己

私たちの細胞内にある小器官「ミトコンドリア」は原始地球時代、まだ私たちの細胞が作られる前にミトコンドリアの先祖である原核生物が“共生”したと考えられるという話をしました。

単機能の生命体同士が共生して新しい生命体を作るというのは合理的な進化の方法ですが、自己の中に非自己を入れるというのは高等な生物細胞では考えられないことです。
自己と非自己を区別して自己を守る免疫機能があるからです。

下等な原核生物で細胞内共生が起こる仕組は、先ず、近くにある物は手当たり次第に“食胞”と謂われる部分に取り込むことに始まります。
次に物を取り込んだ食胞には、加水分解酵素を充填した小器官“リソソーム”が融合し、加水分解酵素によって取り込んだ物は消化されます。
ここで、消化できなかった物は排出されます。
この消化という機能が原核生物の免疫機能を兼ねています。
ですから、リソソームが食胞に融合する前に運良く食胞から細胞質に逃げ出せた生命体はこの原核生物の中で生きられる可能性がある訳です。

マメ科植物で空中窒素を固定する根粒菌を始め、サンゴの細胞内では葉緑素を持った原核生物が共生していたりと、原核生物同士以外でも細胞内共生はありますが、原始地球では食うか食われるから共生が始まったのかも知れません。

さて、私たち人間の免疫機能は驚嘆します。
異物から身体を守っている白血球は2兆個以上、ひと塊にすると脳みそぐらいの大きさになるそうです。
その免疫系の仕組みですが、平常、白血球のひとつであるリンパ球は非自己タンパクを探す手(免疫グロブリンM)を表面に付けて体内をパトロールしています。

ここで問題なのは、自己と非自己を見分ける方法ですが、 『 生まれた直後の未熟なリンパ球は 自己タンパクに反応すると死滅する
という単純な仕組みによっています。
このため、生まれたリンパ球の95%は死滅します。
自己タンパクに反応する不良リンパ球が体内を巡ってしまうと自分の細胞を侵入者として免疫系が攻撃するのでリューマチなどの病気になります。
で、
自己タンパクとは何かと言うと母親の胎内に居るときに存在していたタンパクを指します。
母親に保護されているので細菌などの侵入は無く、自己のもの以外のタンパクは存在しないという訳です。
この仕組みの解明によって、バーネットとメダワーは1960年ノーベル賞をもらっています。

リンパ球が細菌などの非自己のタンパクを発見すると、免疫グロブリンMが非自己タンパクを包み込みます。(初期免疫応答)。
しかし、免疫グロブリンMは色々な非自己タンパクを探すのが役割なので包み込む力が弱いのです。
何でもくっ付けられる接着剤は概して接着力が弱いのと同じです。

そこで、初期免疫応答で時間稼ぎをしている間に発見した非自己タンパク専用の免疫グロブリンGを用意します。
免疫グロブリン(抗体)は分子の配置をくっ付く相手によって自在に変えられるタンパクです。
以前にも侵入された非自己タンパクの場合はリンパ球が記憶しているので専用の免疫グロブリンGが素早く作れます。

接着力が強力な免疫グロブリンGで包まれた非自己タンパクは、免疫グロブリンで囲まれた事が信号になって駆けつけた白血球によって、分解されます。
非自己タンパクが細菌だった場合は、その細胞膜に穴を開け、細胞内に水を流し込んで殺してから分解されます。
(細胞内外の浸透圧を変えて殺す)

侵入者がウイルスの場合、ウイルスは遺伝情報を持っているだけで侵入した細胞の機能を使って増殖するので――他社の工場に設計図を持ち込んで製品を作らせるようもの――外見上はウイルスに侵入されているか判りません。

侵入された細胞はやがてウイルスによって壊される運命ですが、そのときにはウイルスが大量に放出されてしまうのでその前に対処する必要があります。
そこで、
侵入された細胞は自己の細胞内で殖えているウイルスの一部を分解して、“ペプチド−MHC結合体”として細胞表面に提示します。
「こんなウイルスに乗っ取られました」と外部にSOS信号を発する訳です。

このSOS信号は、特定の“ペプチド−MHC結合体”に反応するT細胞(白血球)に見つけられ、このT細胞が猛烈な勢いで殖え、免疫系を刺激し、侵入された細胞ごと分解してしまいます。
このとき殖えたT細胞の一部は、分解したウイルスの情報を記憶して体内を循環し、再び同じウイルスが侵入してきたときに備えます。

このように人 間における自己と非自己は母の胎内に居るときに決まってしまうのです。

※MHCは主要組織適合性複合体
(Major Histocornpatibility Complex)は人によって異なるため、臓器移植の場合には白血球が非自己と認識してしまいます。





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